ここに置いておきますね。

脳みそから取り出した駄文の書き置き

プレミアムモルツで掌を返す庶民

最寄り駅に行く途中に、“ちょっといいおうち”と私が勝手に呼んでいるおうちがある。

家自体は普通の木造一軒家で、小さくて古い。母屋のすぐ隣にアトリエなのか、これまた小さなプレハブ小屋が建っている。そしてその建物を囲むお庭が素敵。たくさんの花が植えられていて、どの花も「今がその時!」とばかりに咲いている。きっとこまめに植え替えているんだろうな。たまに植え替え途中の、剥き出しの花壇が見える。その花壇もまた素敵で、レンガが色違いで交互に並べられていてかわいい。あまりひと様のおうちをじろじろ見るものじゃないけど、通るたびに歩く速度を落として少しずつ脳内イメージをストックしている。

お金持ち!というより、丁寧に大事に暮らしている感じがする。駅に行く用事は減ったけれど、たまに通るのが楽しい。

 

ある日の朝、びんや缶の回収がある朝、そのお宅の前を通ったら、門扉の前にプレミアムモルツの空き缶が出されていた。(たぶん)ちゃんと2週間分、(たぶん)14本のロング缶。

反射的に「ザ・プレミアムモルツ」とひとりごちる。

ははぁ~ん?やっぱりお金持ちだったか。(私の浅ましさと、お金持ちのハードルの低さよ)

いやいやいや、私も毎日ビール飲むからさ、毎日一缶ね。…ウソです、見栄張りました、発泡酒です。だから毎日飲むものの値段が、一見どんなに少額でも、後々いかに響いてくるものかを知っている。お酒なんて嗜好品だからね。別になくてもいいんだから、本来は。

そうか、この御宅はプレミアムモルツか。そうか

確かにね、あの家は少し浮世離れしているというか。駅前の一等地に一軒家って、なかなかないんだよね。駐車スペースもあるしね。門扉があって、そこから玄関までのアプローチもあって、植木も立派だもんね。

プレミアムモルツを(勝手に)発見して以来、勝手に答え合わせを始める貧困な私の脳。

私だって今日飲むプレミアムモルツを買うことはできる、1本2万円の化粧水だって買える。大人だからね、2万円くらいは持っているからね。でも肝心なのは、それを続けることはできないってこと。人生は長いんだ。

何年も前の夏、夫の実家に帰省した際、義母が義兄に「あんたが好きな発泡酒、たくさん買っておいたから!」と言った。義母にとってはおもてなしだったのだろう。それを聞いた義兄が吠えた。

「なんで実家に帰ってきてまで、発泡酒飲まなきゃなんねぇんだよ!もっとうまい酒飲みてぇよ!」

その場にいた義父と私は爆笑した。「たしかに!」

義母はあまりよくわかってなかった。

 

義兄のリクエストは、プレミアムモルツだった。