ここに置いておきますね。

脳みそから取り出した駄文の書き置き

胸焼け系コメディthe officeは3回観てやっと言語化できる

the officeアメリカ版をNetflixで観ている。私、Kakiokiはもう3周目に入りました。

the office』はイギリスで爆発的にヒットしたコメディドラマのリメイク。(UK版はPrime Videoで観られる)

(それにしてもジ オフィス?ザ オフィス?私は“ジ”と呼ぶ派)(中学で習った英語はほぼ抜け落ちたけれど、これだけは残っている)(砂金的知識)

実際は9シーズンあるらしいけど、Netflixでは3シーズンしか配信されていない。とは言え、トータル51話あるからけっこう楽しめる。(が、2021年でこの配信も終わる、らしい)(みんなこういう情報をどこで手に入れるんだろう)(Netflixの広報に親戚がいるのかい?)

このドラマ、鑑賞後の胸焼けがすごいんだよ。まずこれを面白いと思う自分に、自信が持てない。(どんなドラマだ、そんなドラマだ)

回を追うごとに自分の感情にも変化が現れたので、一応書き出しておく。

  • 1周目…胸焼け・ざわつき・不快感、それでもたまらず吹き出す自分
  • 2周目…あぁこのざわつきを楽しむためのドラマってことか、理解した
  • 3週目…もっと観たい、観たいよ!

そもそもこのドラマの感想を書きたくても、言語化するのが難しいんだ。まず自分に芽生えた感情を、根源的に見極めないといけないんだ。だから言葉として残すことで、私も向き合えるものがあると思う。(どんなコメディだよ)

ドラマの舞台はアメリカにある、ごく普通の会社。従業員の会社での日常を追いかける、モキュメンタリー方式でストーリーが進む。

“モキュメンタリー”というのは、ドキュメンタリー番組みたいに、ドラマの登場人物が“カメラマンとインタビュアーに取材されている設定”で話が進むというもの。

 (関係ないけど、“もきゅ”って打って変換すると→(*´ω`*)出るわ)

上司の寒いジョークにガッツリ引いている、従業員の表情を隠し撮りされていたり。社内の誰も気が付いていないゴシップ(秘密の社内恋愛とか)を、カメラがばっちり収めていることもある。

つまりドキュメンタリー同様、視聴者が目撃者になる感覚でドラマが進む。

全体的に一言で表すなら「悪趣味なコメディだな」って感じ。

エロいとかグロいとか、ブッ飛んでるって言うんじゃなくてね。ただただ淡々と、日常。普通であればあるほど、共感できないけど知ってる、見たことある状況。見ないように、何も感じないように蓋をした瞬間を眼前に突きつけられる。当事者としてその輪の中にいたことがある、デジャブみたいな感覚を味わえるドラマ。人が日常で感じる、言いようのない不快感ってあるよね。

the office』ってコメディなのに、ずっと空気が不穏なんだよね。もう『FARGO』くらい不穏。日常的に繰り返される、上司のつまらないギャグ。滑稽であればあるほど、耐えがたい。

日本と違うのは、寒い場面で愛想笑いが起きないこと。愛想笑いってさ、それやっている間は現実逃避ができるんだよね。一種の自己防衛。だけどこのドラマの中ではみんな容赦なく、スーーーンておすまし顔。その時間がもう、典型的日本人の私には耐えられない。

従業員同士も少しずつズルい。

「あ、そこは見て見ぬふりするんだ…救いの手はないんだ」みたいなシーンがそこかしこにちりばめられている。

現実の日常でさ、オフィスでトラブルがあったとき、速攻で「私は知らないです!」宣言する人いるじゃん。発注ミスがあったとか、伝達ミスがあったとか発覚した瞬間とかね。「私は知らないです!関係ないです!」宣言からの「やったの誰ですか!?」的挑発。”犯人捜しより、状況確認して再発防止に努めましょうよ”って場面なんだけどさ。その手のタイプのざらつきが、『the office』には各話たった20分の中に毎回差し込まれる感じ。

そもそもドラマの中の従業員も”今、一緒に働いているのは全員が生活のためであって、それは単なる偶然で、決して仲間ではないですから”オーラが揺るぎない。

別にひとつひとつ瞬間は、切り取るほど決定的ではない。ただ、確実に自分のなかに澱のように溜まっていく。水銀タイプの毒性がある。それをひたすら垂れ流すのが、このドラマ。

私が思わず声出して笑っちゃうシーンは、ドラマ内が全員真顔だったりする。

美しい受付嬢パムと、ハンサムで優しいジムのキャッキャしたやりとりも、絶妙に心をザラつかせてくるんだよ。本当に仲が良くて、どう見ても「もう付き合っちゃえよ!」なんだよね。ただ、パム嬢には、社内の別部署に婚約して3年経つ彼氏がいるんだな。

ジムとパムがお互いに明らかに好意を持っているのに、はじめの一歩が踏み出せず、やり過ごす。その割に、パム嬢と婚約者の関係が前進すると、ジムは目の前の女性をデートに誘う。パム嬢の目の前で。そしてパム嬢は、婚約者と当てつけのキスをする。ずるいなぁもう、本当にヤな感じだよ。

向上心がある派遣くんの苦労に同情しつつ、あ〜コイツもコイツで結構ズルいな…と引いたりもする。

そしてなんと言ってもみんなのリーダー、マイケル・スコットがもう。

傲慢で勘違いも甚だしく、目立ちたがりでウザくて、器が小さい。「世界最高の上司」って書かれたマグカップを、自分で買って使う。

見下していた部下のスピーチが、思いのほか聴衆を魅了したことがあった。それが面白くないマイケルは、スピーチを最後まで聞かず会場を後にする。あとでその部下をジョークで笑わせ、「1000人の聴衆を魅了した男を、僕は笑わせられるんだ、1000人だぞ?と満足気。

マイケルは「僕は差別しないよ、偏見ないよ、理解あるよ、楽しい職場にしたいだけだよ!」という主張を繰り返す。いやだから、その発言がすでに、偏見に満ちた差別の表れだってば!の典型。「僕が人種ネタを繰り返すのは、正しく理解しているからだ!」みたいなね。「尊敬し、尊重しているからだ!」みたいなね。もうどこから突っ込んでいいかわからない。何から伝えたら、この人は理解できるんだろう。

だけどマイケルを見ていると、どうしても孤独を引きずっているように見える。みんなに愛されたいだけなんだ、慕われたいだけなんだってね。キズつき、「こんなはずじゃなかった」をぶら下げて生きている(あぁ…マイケルったら…)って同情すると、次の瞬間「うっざ!」ってなるけど。

これは私が常々思うことだけど”なりたい人物像が明確なのに、その割に全然追い付いていない人”が近くにいるとしんどい。「すごいですね」「お上手ですね」「おしゃれですね」「素敵ですね」「お相手の方は幸せですね」「理想の上司ですね」「自慢のお父さんでしょうね」この言葉欲してるんだろうな、が分かるとそれはもう

言うも地獄、言わないも地獄。

気づいたもん負け。

だけどそれは一方的な見方だ。ドラマの中では、上司に日々うんざりしている従業員も、みんな少しずつ打算的でズルくて意地悪だ。でも現実もきっとそんなもん。

いるいるあるあるの連続で、ここまで好きなキャラを決めかねるドラマははじめて。こんな職場イヤだなぁ…(しみじみ)でもこんな職場って結構あるよなぁ…(しみじみ)こんなもんだよなぁ…(しみじみ)

アメリカやイギリスの皮肉文化というのは、多くの日本人にとっては、精神衛生的にしんどいものがあると思う。

でもさ、みんなで観よう?みんなで胸焼け起こそう?

そして明日からの職場で、マイケルを思い出そう?

実際あれが上司はしんどいぞ。